英語猫

本以外を読むために、本を読む

英検1級を超える英語力(1):Thank youの言い方で英語力が分かる

海外で暮らしていると、様々な英語に接する機会がある。
特に非ネイティブの英語は多様で、なぜそこまで流暢に話せるのだと思うような英語から、
相手に伝わっておらず実際にコミュニケーション上の障害になっている英語まで様々である。

リスニング力が足りないとそれらの違いすら聞き取ることが難しいが、
簡単に聞き取れてしかも話者の能力が推し量れる表現が存在する。

日本人の知らないワンランク上のビジネス英語術 エール大学厳選30講

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それがThank youであると説いたのが、イェール大学ビジネススクール教授のウィリアム・A・ヴァンスである*1

 Thank you! という表現は、誰でも知っています。「お礼だけは得意なんだ」と信じている方も少なくありません。

ところが、このありふれた簡単な英語表現を、自然にしかも効果的に使うのは意外に難しいのです。私に言わせると、英語がかなり上手な一も誤った使い方をしています。そもそも誰だって言える英語表現として認識されているせいか、英語の先生や教材がThank you!を有効に表現するコツを詳しく解説しているのを見たためしがありません。最も頻繁に使う英語表現の1つですから、本当はその重要性をもっと強調していただきたいのですが…

(同書の第1章より)


改善法はいくつかあるのだが、最も日本人にとってeye-openingなのは文脈がよほど明らかでなければThank you for (感謝する理由)のように理由を述べるべきだ 、という指導だろう。


は?それだけ?と思うかもしれないが、実際にこちらで暮らしてみると、この点について意識していない第2言語話者は感謝の気持ちをうまく相手に伝達できていない。とりあえず感謝しているのだということは分かるのだが、一体こちら側が行なったどの部分に関して感謝しているのかが分からないので、次に対応する際に相手の意図が読みにくいというのがある。

そして、ネイティブが書いた英語をこの「Thank youには理由を付ける」という視点から見直してみると、大量に例文が見つかるようになるのだ。

例えば読者からの答えを受け付けるメーリングリストにはThank you for submitting brilliant answers!と書かれていたり、就活で履歴書を会社サイトから投稿した完了画面にはThank you for applying to (会社の名前)などと書かれている。

日常でよく耳にするのは、Thank you for having us.のように、パーティーに招かれたときに使うお礼の表現などである。他にもThank you for the compliment (お褒め頂きありがとう)なども聞いたことがある。


私はこのウィリアム・ヴァンス氏の著作が好きで、というのも、読者側の学習負担が少ない割に、コミュニケーション上の効果が絶大だと思うからである。私が知る限り、日本語で読める中で、Thank you にそのような改善点があると指摘した本は他に存在しない。同書を買ったのは2年も前のことだが、ここにしか書いていないことが多いため未だにiPhoneKindleアプリで見返す(検索ができる)、数少ない良書の一つである。

*1:イェール大学に留学していた人に話を聞くと、ヴァンス氏が大学ではどういう活動をしているのかなどが聞けて興味深かった。